病理診断科の紹介
病理診断科は病理診断を主な業務とする診療科です。
病理診断は組織診と細胞診に大きく分けることができます。組織診と細胞診では取り扱う検体の種類が異なりますが、どちらも顕微鏡下に採取検体を観察して病気を診断することです。組織診の標本は、生検や手術によって採取された“組織”検体から作製されます。組織診では、十分量の組織標本を観察することによって病名を確定診断することができます。
また、病気の進行具合を把握したり、治療効果を評価することもあります。一方、細胞診では、生検や手術で採取される組織検体と異なって、擦過や穿刺吸引などによって採取された“細胞”検体から標本が作製されます。細胞診では、悪性細胞の有無を判定したり、病名を推定診断することが可能です。また、これらの組織診や細胞診の手段を用いて、術中迅速診断や病理解剖も行われています。術中迅速診断は、手術方針を決めるために手術の最中に行う病理診断です。提出された検体を凍結させて標本を作製するので、20分程度で術者に結果を伝えることができます。手術後には摘出された手術検体から通常の組織標本が作製され、より詳細に検討されます。
病理解剖では、生前の治療の甲斐なく亡くなられたあと、生前の病変が正しく診断されていたか、あるいは治療が適切であったかなどを把握するために解剖によって明らかにします。
病理診断科は、患者さんと直接対面して診察することはありませんが、組織や細胞を通して患者さんを診ている診療科でございます。
病理診断科について
生検や手術などで取られた組織検体や細胞検体を適切に処理し、鏡検可能なスライド標本を作製します。標本作製は検査技師の仕事です。病理医は手術検体や迅速検体の切り出しを行い、出来上がった標本を鏡検し、病理診断書を作成し、臨床科に提出します。病理診断は最終診断となり、そのためその診断には重い責任が伴います。臨床医のように患者と直接接する機会は少ないですが、臨床医療をサポートする重要なものの一つが病理診断です。
病理では、全身の様々な疾患について接し、学ぶ機会が得られ、その診断を自らが行うことにより、疾患についての深い理解が得られます。
当院病理診断科の特色
当院では、熊谷市の中隔医療機関として機能しているわけで、多くの患者様を診療しています。疾病の種類も多く、また成人病の代表である“がん”の種類も多種多様で、それらの多くを当院では診療しています。従って、最終的に診断するのが病理ですので、その正確さが重要視されます。当科では、一線で活躍されている経験豊富な複数の病理医が診断に携わっているのが特徴です。また、速やかに診断の結果を出すことを日頃より心がけ、患者自身の病気の不安を早く解消できるように努めています。さらに、臨床科と連携を深めるために、密な連絡を図り、時によっては、病理医と検査技師が病理検査室を出て、内視鏡室などの検査の現場に赴き、その場で病理検査の検体処理を行うことで、病理診断に不十分な試料を得ることのないように努めていることも、他の医療機関の病理検査科ではみることの少ない実践も特徴の一つといえます。
診療実績
2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
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生検件数 | 1792 | 1466 | 1913 | 2095 |
手術件数※1 | 842 | 852 | 969 | 1060 |
組織件数 | 2634 | 2318 | 2882 | 3155 |
細胞診件数 | 4387 | 3951 | 4688 | 4968 |
術中迅速組織診断 | 0 | 0 | 0 | 55 |
術中迅速細胞診断※2 | 0 | 0 | 0 | 95 |
※1 手術件数は皮膚科・形成外科等の外来切除例も含む
※2 EUS-FNA時の迅速細胞診断(ROSE)も含む
井村医師より
病理医は、“Doctor of Doctors(医師のための医師)”と言われるぐらい必要かつ重要、そしてその任は重いものです。医療が正しく、迅速に、的確に遂行されるためには、病理医だけでなく、携わる検査技師共々、病理診断科が当院で果たす役割は重要な部門の一つと確信しています。