脳神経外科とは
脳神経外科は、中枢神経(脳、脊髄)すべての神経系に関する疾患を診療する外科です。 新生児から高齢者までを対象としており、年齢による制限はありません。
当院脳神経外科の特色
24時間、積極的に救急患者様を受け入れ治療を行っています。最新の診断技術、最先端の治療技術で治療を行うことを基本にしています。特に脳血管疾患(くも膜下出血、未破裂脳動脈瘤、脳梗塞)、脳腫瘍、水頭症の治療に力を注いでいます。中枢神経の病気は、合併症があることが多いのですが、当院は総合病院であるため、他科との連携により全身状態の把握ができる利点があります。
診療内容
脳腫瘍
神経膠腫、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、転移性脳腫瘍など
脳血管疾患
破裂脳動脈瘤、未破裂脳動脈瘤、脳動静脈奇形、脳出血、脳梗塞など
脊椎脊髄外科疾患(頚椎領域)
変形性頚椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊髄空洞症など
機能神経外科疾患
顔面けいれん、三叉神経痛、パーキンソン病など
神経外傷
脳挫傷、慢性硬膜下血腫
その他
認知症(アルツハイマー病、正常圧水頭症等による)、てんかん
代表的疾患の年間手術数
2015年 | 2016年 | 2017年 | ||
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脳腫瘍 | 2 | 4 | 10 | |
脳血管障害 | 脳動脈瘤 | 12 | 6 | 13 |
脳内出血 | 3 | 6 | 8 | |
虚血性疾患 | 0 | 7 | 4 | |
その他 | 0 | 1 | 1 | |
頭部外傷 | 2 | 5 | 2 | |
慢性硬膜下血腫 | 19 | 11 | 11 | |
水頭症 | 37 | 13 | 12 | |
脊椎・脊髄 | 0 | 8 | 14 | |
血管内手術 | 1 | 2 | 2 | |
てんかん | - | - | 44 | |
その他 | 8 | 7 | 17 | |
合計 | 84 | 70 | 138 |
トピックス
ブレインアタック
脳卒中の死亡率はがん、心疾患についで第三位と多く、近年脳出血より脳梗塞が増えています。最近脳梗塞に対し発症3時間以内に適切な治療(t-PA)を行うことの重要性が強調されています。そこで心臓発作(ハートアタック)と同様に緊急処置が必要な病気と認識され、ブレインアタックと呼ばれるようになりました。
- 身体の片側の顔、手、足に突然脱力、しびれがおこる。
- 突然片目が見えにくくなったり、ものがぼやけて見える。
- 言葉が急にしゃべりにくくなったり、理解できなくなる。
- 突然のめまい、ふらつき、転倒
このような症状がありましたら、すぐに当科受診をしてください。
脳動脈瘤の治療
当院では脳動脈瘤の治療は、クリッピングを原則にしています。動脈瘤の大きさ、場所年齢、全身状態により血管内治療を行っています。血管内治療は専門医に依頼していますので、当院ですべての脳動脈瘤の治療に対処可能です。
脳磁図検査(MEG検査)「脳の働き」を「みえる化」する検査
1. 「てんかん」や「認知症」は「脳の働き」の病気
皆さんが「脳の病気」と言われて思い描くのは、どんな病気でしょう。「脳卒中(脳梗塞や脳出血)」や「脳腫瘍」と答える方が多いかもしれません。脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破れたりして、脳の一部が壊れる病気です。脳腫瘍は、脳に「できもの」ができる病気です。どちらも、「脳の形(の一部)」が変わりますから、CTやMRIと呼ばれる「脳の形の写真」を撮ることで、多くの場合は診断ができます。
「てんかん」や「認知症」もまた、「脳の病気」の結果起こります。ただ、これらの病気は「脳卒中」や「脳腫瘍」と違って、必ずしもCTやMRIなどの「脳の写真」には写りません。これらの病気は「脳の働き」の病気です。「働き」には形が無いので、写真には写らないのです。例えば「高血圧」や「糖尿病」を考えてみましょう。高血圧は「体の血圧を調整する仕組み」の、糖尿病は「体の血糖値を調整する仕組み」の病気なので、何か形があるわけではありませんね。「てんかん」や「認知症」は「高血圧」や「糖尿病」のように、形が見えない病気なのです。
写真に写らないなら、どのように検査したらよいでしょう。高血圧の検査の基本は血圧測定、糖尿病だと、基本は血糖値測定ですね。では「てんかん」や「認知症」は?そうです「脳の形」ではなく「脳の働き」を見る検査が必要なのです。
2. 「脳の働き」を「見える化」する
「脳の働きを見る」のは、実はそんなに簡単なことではありません。一番大切なことは、「専門的な知識を持った医師の診察」です。それをサポートするために、いくつかの検査が組み合わせて使われます。専門の訓練を受けたスタッフ(臨床心理士など)による心理検査などもとても重要です。そんなサポート検査の一つに、「脳磁図検査(MEG検査)」があります。脳は「神経の中を電気が流れる」ことで働いています。病気の脳は、正しく働いていないので、電気の流れも正しくありません。脳磁図検査は、「病気特有の、正しくない電気の流れ」を捉えて、「病気を見える化」します。
3. 脳磁図検査は安全な検査
脳磁図検査は、薬も、放射線も、電波も何も使いません。「脳から自然に漏れてくる磁場」を捉える「受信器」です。機械からは何も出ず、受信するだけなので、きわめて安全です。例えるなら「脳の聴診器」。「あてて聞くだけ」なので、きわめて安全です。MRI検査などと違い音もしませんし、狭い筒の中に入ることもありません。検査中は常にモニターで安全を確認していますし、マイクロホンを使ってお話することもできます。赤ちゃんからお年寄りまで、安心して検査を受けていただけます。
4. 対象になる病気
脳磁図検査は「脳の働き」を見える化する検査ですから、「脳の働き」に関わる病気なら、ほぼすべてが対象になります。
いちばん活躍するのが「てんかん」です。「てんかん」は100人に一人が患う、ありふれた病気です。「正しい治療」を行うことで、多くの方がその症状から解放されます。「正しい治療」を行うためには「正しい診断」が欠かせません。実は「てんかん」というのは、一つの病気ではありません。いろんな病気の集まりなのです。ですから患者さんによって原因が違いますし、症状も、治療方法も違います。その原因を調べ、脳の中で何が起こっているのかを調べるのに「脳磁図」はとても役に立ちます。
「認知症」もまた、60歳以上の5%以上の方が患う、ありふれた病気です。認知症がどのくらい進んでいるのか、治療がどの程度効いているのかを調べるのには、脳磁図はとても頼りになります。
他にも脳卒中や脳腫瘍などでも、脳の働きが変化しますので、脳磁図検査の対象になります。脳の働きが、今どうなっているのかを調べ、治療方針を立てるのに参考になります。
5. 熊谷総合病院MEGセンターの取り組み
脳磁図検査は、日本では2000年ころから次第に使われるようになった検査で、とりわけ新しい検査という訳ではありません。しかし同時に、まだまだ発展途上の検査でもあります。とりわけ認知症に関しては、その有用性は良く知られているにも関わらず、街中の病院で一般の患者さんに利用されるには至っていません。それは、検査結果の分析に、高度な技術と知識が要求されるため、専門スタッフが居ないと実施できないことが、大きな原因です。熊谷総合病院では、専門知識を持ったスタッフが勤務しているため、このような高度な検査を行うことができます。また、検査の精度をさらに向上すべく、国内外の大学や研究所、企業と協力しながら、検査改善のための研究を行っています。
6. 患者さまへの協力のお願い
検査精度を向上するためには、少しでも多くの患者さまの検査データが必要です。そこで、ご協力いただける同意がいただける場合は、データを匿名化し、研究用に再利用させていただく場合があります。ご同意いただけない場合は、そのような再利用は行いません。ご同意いただけなくても、通常通り誠実に検査結果を分析し、治療に反映させることには変わりありませんので、ご安心ください。また、研究は熊谷総合病院倫理委員会の承認のもと、実施します。
7. 共同研究先及び研究費
より効率的に研究を行うため、私共は、以下の大学などと共同研究を行っています。
- 北斗病院(北海道帯広市)
- バリャドリッド大学(スペイン)
- 大阪市立大学(大阪市)
- 株式会社リコー
- 美原記念病院(群馬県)
また、研究にかかる経費の一部を、株式会社リコーから受ける共同研究費によってまかなっています。
8. お問い合わせ
ご不明の点は、熊谷総合病院MEGセンターにお尋ねください。
担当:鴫原 良仁(医師)